0. 教訓
真空系では、バルブの開閉手順を一度間違えるだけで、装置全体が致命的な損傷を受けることがある。
1. 事例内容
ある実験で、真空チャンバーをすでに真空状態にしたままロータリー真空ポンプを起動しようとした。作業者はバルブ操作の順番を誤り、チャンバー側へのバルブを開放した。その瞬間、ポンプ内のオイルが一気にチャンバー内へ逆流した。
オイルは内部の壁面や部品に広がり、真空特性を大きく損ない、洗浄や再生が困難な状態となった。最終的にチャンバーは廃棄となった。
失敗した人の声
「バルブを開けた瞬間、ビューポート越しに黒いオイルがスーッと流れ込んでいくのが見えました。『あ、やってしまった』と頭が真っ白になりました。」
「チャンバー内の精密部品が一瞬でオイルまみれになり、何十万円もする装置が使い物にならなくなってしまいました。上司に報告するときは本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。」
「この経験以来、バルブ操作は必ず手順書を確認してから行うようになりました。一瞬の油断が高額な損失に直結することを身をもって学びました。」
2. 原因
- バルブ開閉手順の誤り(安全確認なしの操作)
- 逆流防止機構(逆止弁)が未設置
- 作業前の操作手順・状態確認不足
3. 影響・被害
- 真空チャンバーの廃棄による数十万円の損失
- 実験スケジュールの大幅な遅延
- 代替装置の手配と設置に要する時間とコスト
4. 防止策
- 操作マニュアルを作成し、必ず手順通りに実施
- バルブには開閉状態を明確に示す表示やロック機構を導入
- ポンプとチャンバーの間に逆止弁を設置
- 作業前の復唱確認(ダブルチェック)を習慣化
- 真空系操作に関する定期的な安全教育の実施
5. 再発防止チェックリスト
- ✅ 操作手順書確認:バルブ開閉の正しい順序を確認したか
- ✅ 装置状態確認:ポンプとチャンバーの現在の状態を把握したか
- ✅ 逆流防止策確認:逆止弁が正しく設置されているか
- ✅ ダブルチェック実施:作業前に同僚との復唱確認を行ったか
- ✅ 緊急時対応確認:逆流が発生した場合の対処法を把握しているか
- ✅ バルブ表示確認:各バルブの開閉状態が明確に表示されているか