失敗事例 #12
「シールテープの巻きすぎで接続不能に」
0. 教訓
「念には念を」は大切ですが、基本仕様を逸脱した念の入れ方は逆効果。
見えない部分ほど教科書どおりの手順と確認が、最も確実な保険です。
1. 事例内容
研究室で真空配管の立ち上げ作業を行っていたときのこと。私は先輩から「ネジ部にシールテープを巻いて漏れを防止するように」と指示され、初めて自分でシールテープを使ってみることに。
「しっかり密封しないと漏れるかもしれない」と不安になった私は、ネジ部に10回以上ぐるぐるとシールテープを巻きつけた。見た目も”しっかり詰まっている”感じがして安心して接続を試みたが、ネジが全く入らない。力を入れてねじ込もうとすると、途中でネジ山が削れてしまい、最終的に継手が破損。高価な部品を無駄にしてしまった。
失敗した人の声
「真空配管なんて絶対に漏れちゃダメだから、シールテープはたくさん巻いた方が安全だと思い込んでいました。先輩に『念入りに』と言われたので、10周以上ぐるぐる巻いて『これで完璧』と満足していたんです。
でも、いざ接続しようとしたら全然入らない。『おかしいな』と思いながら無理やり力を入れたら、ガリガリという嫌な音と共にネジ山が削れてしまって…。あの瞬間の絶望感は今でも忘れられません。
結局、数万円の部品を台無しにして、スケジュールも大幅に遅れて、先輩や同僚に迷惑をかけてしまいました。『基本を知らないまま自己流でやるのが一番危険』ということを、身をもって学びました。」
失敗の経緯
- テープを10周以上ネジ部にぐるぐる巻き付ける
- 手応えが硬いまま継手をねじ込もうとして締付トルクを過大に
- ネジ山がつぶれ、継手と配管の双方が使用不能に
- 取替え部品の手配・再配管・再リークテストで半日以上の工程遅延
2. 原因
原因分類 |
詳細 |
知識不足 |
適正巻き数(通常2〜3周)と巻き方向(締付方向と同じ)を知らなかった |
思い込み |
「多ければ多いほど漏れない」という誤解 |
施工管理不足 |
作業前の指差し確認や先輩のダブルチェックを省略 |
3. 影響・被害
- 継手・配管とも交換(数万円のコスト)
- 真空ライン立ち上げの遅延で実験スケジュールに波及
- 失敗報告書の提出と是正策の社内共有で工数追加
- 「些細な作業でも基礎知識を軽んじない」という意識づけ材料になったが、信用の毀損は大きい
4. 防止策
シールテープは「巻けば巻くほど良い」というものではありません。むしろ、適切な回数(2〜3回)と巻き方を守ることが、最も信頼性の高い接続につながります。
このような失敗は、特に新人や学生実習でよくある事例です。「見えないところの作業ほど、慎重に。基本を侮らない」という姿勢が、真空装置の立ち上げ成功には欠かせません。
具体的な対策
- 巻き数を決め打ちしない
テーパーねじ:2〜3周が標準。細径・荒ネジでは1.5周程度で十分。※平行ねじにシールテープは使わない。
- 巻き方向を必ず確認
常にネジを締め込む方向に合わせ、先端側1.5ねじ山は空ける。
- 挿入抵抗が大きければ即停止
手締めで2〜3山かからない場合は巻き過ぎか、異物混入。
- 先輩・同僚のダブルチェックを徹底
「初回作業+重要接続」は二重確認を標準手順化。
- シール材の選定基準を理解
温度域・流体種によりペーストや液体ガスケットが適する場合もある。
5. 再発防止チェックリスト
- ✅ シールテープの適正な巻き数(2〜3周)を理解した
- ✅ 巻き方向(締付方向と同じ)の重要性を認識した
- ✅ 「多ければ良い」という思い込みを改めた
- ✅ 手締めでの感触確認の重要性を理解した
- ✅ 基本作業でもダブルチェックを行う習慣を身につけた
- ✅ シール材選定の基礎知識を習得した