失敗事例 #10
「VCR®継手にガスケットを2枚入れて締結、もしくはガスケット無しで締めてしまった」
0. 教訓
VCR® 継手は「一発勝負の精密シール」。――余計なものを挟めば即アウト、足りなくても即アウト。
“1 枚を正しく入れる”――この基本を外すと、高真空システムはあなたを容赦なく止めに来る。
1. 事例内容
VCR®継手にガスケットを 「2 枚」 または 「無し」 で締結し、継手を使用不能にした例
項目 |
内容 |
発生場所 |
半導体製造装置・真空配管ライン |
使用部品 |
Swagelok® VCR® ステンレス継手(3/8 in.) |
失敗内容 |
① ガスケットを誤って 2 枚 重ねて締結 ② ガスケット 未装着 のまま締結 |
主な結果 |
真空リーク/シート面の圧痕・変形 → 継手交換(作業停止 + 追加コスト発生) |
失敗した人の声
「部品トレーにガスケットが2つ入っていて、てっきりスペア付きだと思い込んでしまいました。『親切だな』と思いながら、2枚重ねて挿入したんです」
「別の現場では『ガスケットはあらかじめセットされているはず』という先入観で、確認せずに締結してしまいました。リークテストで圧力が下がらない時の絶望感は忘れられません」
「VCR®は『一回限りのシール』だと知らずに、普通の継手と同じ感覚で作業していました。6万円の部品代と1.5日の装置停止…確認の大切さを痛感しました」
発生状況
- 新人オペレータが装置立ち上げ中に VCR® 継手を組付け。
- 部品トレー内に混在していたガスケットを「スペア付き」と勘違いし、重ねたまま挿入。
- 別ラインでは「ガスケットはあらかじめ入っているはず」と思い込み、未装着のまま締結。
- 立ち上げ時のリークテストで到達圧力が目標値を超過。ヘリウムリーク検査で当該継手からリークを検知。
2. 原因
階層 |
具体的要因 |
直接要因 |
– ガスケット数量・位置の目視確認を省略 – 過トルクでの締付けによりシート面が塑性変形 |
間接要因 |
– VCR® 継手は「1 回限りシール」であるという構造理解不足 – 部品管理の不備でトレー内に異物混入 – チェックリスト不備(ガスケット点検項目なし) |
根本要因 |
– 作業者教育と OJT が手順中心で原理説明が不足 – 作業前の ピアレビュー(相互確認)文化不定着 |
3. 影響・被害
- 継手 4 組を交換:部品代 ≈ 6 万円
- 装置停止 1.5 日:ライン全体のスケジュール後倒し
- ガスケット重ね締めにより ナット・ボディ両面のシートに圧痕 → 再研磨不可で廃棄
- 部門内で 是正策レビュー会議 を緊急開催(人的コスト増)
4. 防止策
- ガスケットは必ず 1 枚、向きに注意して挿入
- 締付けトルク管理
- メーカー規定トルクレンチを使用(例:3/8 in.= 17 N·m)
- ピアレビューを標準化
- 部品供給トレーの 5S 徹底
- 新人教育は”手順”だけでなく”原理”まで
- VCR® のシール機構(メタル・メタル + ガスケット圧潰)を図解で説明
5. 再発防止チェックリスト
- ✅ VCR®継手の「1回限りシール」構造を理解した
- ✅ ガスケット1枚の重要性を認識した
- ✅ ガスケットは台紙から外したその場で1枚のみ挿入する
- ✅ シート面に傷・ゴミがないことを確認する
- ✅ 目視+指差呼称による確認方法を習得した
- ✅ 適正トルクでの締付の重要性を理解した
- ✅ トルクレンチ設定値を事前確認する
- ✅ 締結後にヘリウムリーク検査を実施する(目標:≦1 × 10⁻⁹ Pa·m³/s)
- ✅ ピアレビュー(相互確認)の習慣を身につけた
- ✅ 部品管理の5S(整理整頓)を実践する意識を持った