失敗事例 #08
「六角穴付きボルトでミリ/インチ六角レンチを取り違え、ボルト穴を潰した」
0. 教訓
「少しでもガタつきを感じたら即座に作業中断」
六角穴付きボルトのミリ/インチサイズは見た目では区別困難。刻印確認とガタつきチェックを怠ると、一瞬で六角穴を潰してしまい、除去に何倍もの時間とコストがかかる。
1. 事例内容
状況:装置を分解中、1/8インチ(約3.175mm)の六角穴付きボルト(キャップボルト)を外そうとしたところ、わずかなガタつきを感じつつもレンチを回転。「グニッ」という嫌な感触とともに空転が発生し、ボルトの六角穴が舐めて(潰れて)しまい取り外し不能となった。
失敗した人の声
「M3のボルトだと思ってのM3用六角レンチを差し込んだ時、わずかにガタつくような感覚がありました」
「でも入ったし、急いでいたのでそのまま回してしまったんです。『グニッ』という嫌な感触の瞬間、心臓が止まりそうでした」
「たった0.175mmの差で、結局半日以上かけてボルトを除去する羽目になりました。あの時確認していれば、と今でも後悔しています」
2. 原因
直接要因
- 1/8 inch(≒3.175mm六角穴付きボルト)にM3用六角レンチを挿入
- サイズ差がわずか0.175mmで見分けづらく、入ったから合っていると早合点
背景要因
- ボルト頭部およびレンチのサイズ刻印を確認しなかった
- 刻印が小さく読みづらい・時間短縮への焦り
- 工具管理ルールの未徹底:ミリ系とインチ系レンチが同じ工具箱に混在
- ガタつきを感じたにも関わらず作業を継続
3. 影響・被害
- 六角穴付きボルトの除去作業(抜き取り・再タッピング等)が必要
- 部品手配・再組付けで半日〜1日以上の工数遅延
- ボルト穴が深く損傷した場合、装置部品自体を交換する追加コストが発生
- 作業効率の低下と品質への不信
4. 防止策
“ぴったり嵌る”を最優先
僅かでもガタつきを感じたら作業を中断。手応えチェックで異常を見逃さない。
サイズ確認の習慣化
- ボルト頭部とレンチの刻印を必ず目視
- ノギスでレンチ幅を測定し、実寸で確認する癖をつける
工具区分・管理の徹底
- 色分けトレーや工具ラックでミリ/インチを物理的に分離
- 貸出・返却記録を残し、混在を防止
知識共有
- 混同しやすい組み合わせ(例:M8 ↔ 5/16 inch、M6 ↔ 1/4 inch)をポスターや朝礼で周知し、イメージで覚えられるようにする
5. 再発防止チェックリスト
- ✅ ボルト頭部のサイズ刻印確認:ボルト頭部の刻印を目視で確認した
- ✅ 六角レンチのサイズ刻印確認:使用する六角レンチの刻印を確認した
- ✅ ミリ/インチ系統の区別:ミリ系とインチ系の区別を明確にした
- ✅ 実寸測定の実施:ノギスで実寸測定を行った(必要に応じて)
- ✅ ガタつきチェック:レンチ挿入時のガタつきをチェックした
- ✅ 工具の適切な管理:工具は適切な保管場所から取り出し、使用後は元の場所に戻した
- ✅ 混同サイズの把握:混同しやすいサイズの組み合わせを把握している
- ✅ 六角穴損傷リスクの理解:六角穴を潰した時の除去の困難さを理解した