0. 教訓
    
      「輸送前の締付確認は、品質保証のラストワンマイル」──必ず手順化し、実行・記録せよ。
      小さなボルト1本の管理不備が、納期遅延・追加コスト・信頼低下を招く。
     
    1. 事例概要
    
      | 項目 | 内容 | 
|---|
      
        | 発生工程 | 装置出荷前(梱包・出荷準備) | 
      
        | 発生場所 | 装置搬送トラック内 → 客先据付現場 | 
      
        | 関係部品 | 防振用アジャスタボルト(M16 × P2 全ネジ) | 
      
        | 直接原因 | アジャスタボルトを仮止めのまま本締め確認せず出荷 | 
      
        | 結果 | 輸送振動によりねじがかじり(焼き付き)発生 → 現地で高さ調整不能 | 
    
  失敗した人の声
  「量産立ち上げで時間に追われ、仮止めでも“付いているから大丈夫”と判断してしまいました。今思えば、忙しさを言い訳に最終トルク確認を後回しにしたのが根本原因です。」
  「輸送振動を甘く見ていました。走行中の微小な摺動で熱が出て、ねじ同士がかじるなんて想像もせず……“動的環境”を設計・検査に織り込めていませんでした。」
  「客先でレンチが1ミリも回らず血の気が引きました。浸透潤滑剤の使用も現場規定でNG、タップや替えボルトの持参もなく、持ち帰りの判断をした瞬間に“時間・運賃・信用”の重さが一気にのしかかりました。」
  「チェックリストはありましたが、トルク値の“記録欄”が空欄のままサインしていました。『やったつもり』では意味がない。数値と実施者名が残って初めて品質は担保されると痛感しました。」
  「たった5分の時短が、2日のロスになりました。再輸送・再加工・再検査に加えて、何よりお客様の段取りを崩してしまったことが最大の損失でした。」
  「今は『最後に回した人が責任者』ルールを徹底し、赤札(仮止めタグ)運用も必ず回収記録まで残します。現場据付キットに“替えボルトとタップダイス”を常備し、同じ失敗を二度と起こさない体制に変えました。」
 
    2. 詳細経緯
    
      - 出荷前検査:仮止め状態で「OK」判定。チェックリストに本締め基準がなく属人化。
- 輸送中:走行振動でボルト‐ナットが微小摺動 → 発熱 → かじり発生。
- 現地据付:高さ調整を試みるも固着で不可。タップ・替えボルトの持参なし。
- 対応:工場へ持ち帰り、タップ立て直し・ボルト交換後に再納品。
3. 影響・被害(集約)
    
      - 追加輸送費(往復)、再加工・再検査工数、納期2日遅延による違約金リスク
- 顧客信頼低下
- 潜在的二次被害:運搬中のボルト脱落 → 装置転倒・機器損壊・第三者災害の可能性
4. 防止策(実行計画)
    
      
        | 分類 | 具体施策 | 
      
        | ヒト | 「輸送前最終トルクチェック」を新人教育に追加。かじり防止潤滑(モリブデン等)の適用基準を指導。 | 
      
        | モノ | 出荷チェックリストに「アジャスタ本締めトルク ◯◯ N·m」欄を追加。(記録必須) | 
      
        | 方法 | 仮止め禁止タグ(赤札)を本締め後に回収。現地据付キットへ「替えボルト+タップダイス」を標準同梱。 | 
      
        | 設計/環境 | かじりに強い材質(例:ステンレス+ドライ潤滑皮膜)への切替を評価。 | 
    
    5. 出荷前チェックリスト
    
      - ✅ 本締めトルクを実測し、値と実施者を記録した
- ✅ 仮止めタグ(赤札)を撤去・回収した(回収記録あり)
- ✅ かじり防止の潤滑処理(指定品)を適用した
- ✅ 据付キットに替えボルト・タップダイスを同梱した
- ✅ 出荷ロット番号とトルク実測値をトレース台帳へ登録した
- ✅ 作業者へ「仮止め=未完」の最終リマインドを実施した