失敗事例 #07
「Swagelok®継手の「mm」と「インチ」を取り違えてリーク発生」
0. 教訓
“似て非なる規格”は 「一瞬の油断」+「習慣化していない確認作業」 で事故になる。
小さな差に”大きな敬意”を払おう。
1. 事例内容
- 真空配管の組み立て中、6 mmのチューブを1/4 インチ(6.35 mm) のSwagelok継手へ誤って挿入。
- 見た目にはほぼ違いがなく、スムーズに挿入できたため違和感を抱かないまま締付作業へ進行。
- リークテストで漏れが検出され、分解点検の結果、寸法不一致が原因と判明。
- このトラブルにより、配管全体のやり直し・再試験で半日超の工程遅延と追加コストが発生した。
- 6 mmと1/4 inchの差はわずか0.35 mm。手触りや見た目では判別困難だが、シール性能には致命的。
失敗した人の声
「継手がスムーズに挿入できたので、当然合っているものだと思い込んでしまいました。6mmと1/4インチなんて、ほぼ同じサイズだから大丈夫だろうと軽く考えていたんです。」
「リークテストでアラームが鳴った瞬間、背筋が凍りました。まさか自分がそんな初歩的なミスをするなんて。分解して原因を調べているとき、0.35mmという微細な差が致命的だったと知り、愕然としました。」
「半日かけて組み立てた配管を全部やり直すことになり、チーム全員に迷惑をかけてしまいました。それ以来、どんなに似ているサイズでも、必ず刻印を確認し、ノギスで測定してから作業するようになりました。『挿さったから大丈夫』という考えは完全に捨てました。」
2. 原因
要因 |
具体的な問題点 |
サイズ確認不足 |
刻印の文字が小さく、作業現場の照明では読み取りづらかった。品番照合を省略。 |
在庫管理の甘さ |
mm規格とinch規格が同じ棚に混在し、ラベル色も統一されていた。 |
チェックリストの未整備 |
作業前に「チューブ径と継手径をダブルチェックする」手順が明文化されていなかった。 |
教育不足 |
新人へ「似たサイズでも互換性ゼロ」という前提知識が十分伝わっていなかった。 |
3. 影響・被害
- 工程遅延:配管全体のやり直しと再試験により半日超の作業停止
- 追加コスト:部品交換、労務費、機会損失による経済的被害
- 信頼失墜:顧客および社内における品質管理への不信
- 安全リスク:真空系統の不具合による装置異常の可能性
4. 防止策
視覚的管理の徹底
- 保管箱を規格別(mm/inch)で分離し、色分けした大型ラベルを貼付。
- 仕様書や部品リストに 〈mm規格〉〈inch規格〉を赤字・太字で明示。
プロセス内チェックの義務化
- 作業手順書に「チューブ径 ⇔ 継手径のクロスチェック」を追加し、署名欄を設ける。
- 締付前に必ず寸法を声出し確認(ダブルチェック)する”K-Y(危険予知)コール”を導入。
現場教育の強化
- 新人研修で「mm/inch取り違え実験(わざとリークさせて可視化)」を実施し、失敗のリスクを体感させる。
- 0.35 mmの差がシール不良に直結する理由(管座・フェルール座の変形量)を図解付きで説明。
工具・治具の共通化禁止
- mm用・inch用でフェルールセット、工具を完全に分離。
- 混用防止のため、工具に規格刻印と色リングを取り付ける。
「挿さったから大丈夫」は通用しない。
真空・高圧系では、0.1 mm未満のギャップでも重大なリーク源になる。
サイズ確認は最後の保険ではなく、作業開始前の必須工程――これを徹底するだけで、時間とコスト、信頼を守れる。
5. 再発防止チェックリスト
- ✅ 作業前の準備確認:使用するチューブと継手のサイズ規格(mm/inch)を仕様書で再確認
- ✅ 部品の視覚確認:チューブと継手の刻印を拡大鏡・ライトを使用して直接確認
- ✅ 寸法の物理的確認:ノギスやマイクロメータで実寸を測定し、規格値と一致することを確認
- ✅ ダブルチェック実施:別の作業者または監督者による規格確認(声出し確認)を実施
- ✅ 接続前の最終確認:フェルール・ナット・ボディの組み合わせが同一規格であることを確認
- ✅ 締付トルク管理:規格に応じた適正トルクで締付け、締付け後の外観異常なし
- ✅ リークテスト実施:ヘリウムリークディテクタまたは石鹸水でリークがないことを確認
- ✅ 記録・報告:使用部品の品番、ロット番号、作業者名、確認者名を記録に残し、報告完了